アイワナビー・ストロンゲスト・クリエイター①

さわやかな朝の光さしこむメトロ駅前、始発はまだない。今日もいい天気だ、労働日和。

栄養ドリンクをひねるおとがキチッと響く静けさのホームに、でっかく広告、「大きくなったらなにになりたい?」

パパに肩車されてるかわいい女の子、ママは傍らに寄り添って三人揃って遠い目しててみてるのは多分明日明後日の向こう側。キャッチコピー、「安心できる未来を」。ザ・保険広告、資本主義国家の労働市場最大手東京の、メトロにこれを張るのはこれ以上ない大正解の打ち方だ。

でも広告代理店さん、私間違いひとつみつけました。未来を知りたきゃそんな遠いところ見る必要ないから。私みたいなくたびれたOLならそこらにいくらでも転がってるから。パパのおよめさん!→げーむつくりたい!→プログラマーで食べていけるかな→専業主婦がいいです。私もいろいろ夢あったなあ。でもおかあさんおとうさんごめんなさい、私何一つ叶えられませんでした。こんなにかわいい子供が頭を下げる未来図なんて描きたくないから、私が代わりに謝ってあげて、一日一善達成。みんな、ほらみてこの笑顔、私が謝ってあげたからだよ、うふふ。

私は槍田いの。プログラマー、20歳。ゲーム会社(そう説明されて入社したものの、実態は“アミューズメント機械の制作”現場だった)勤務二年目。たのしくあかるくアットホームで働きやすくて腕っ節も強いし弁も立つ愉快な仲間がたくさんの会社で働いている。

働くことが楽しすぎて帰るのも忘れたり、30日連勤だってできちゃって、圧倒的成長に体がおいつかなくてボロボロになっちゃうぐらい。代々木っていう立地も最高、いつか代々木のゲーム専門学校に通いたいなって思ってたし、山手線は朝の早くから走ってて、東京の電車も始発は意外と空いてるんだから結構快適、帰りはそうはいかないけれど、混む時間がいやなら会社に泊まればいいんだしね。うんうん快適だなあ、コンクリートジャングル。

そんなわけ、あるか。

二十連勤目の私に朝の眠気が容赦なく襲い来る。うつらうつらと揺れにゆられて、うっすら車輪と私の生活に思いを馳せる、すべてのものはめぐりめぐるんだ、万物みんなが行っては戻る。昇って沈む太陽に、寄せては帰る白い波、天地めぐって人を成し、揺らいで現れ立ち消えて、閉じては開くこの宇宙、なにもかもがぐるぐるしてるんだ、この山手線だってそう。昨日おうちに帰ってから朝おうちでるまで何時間あったっけ、まあいいや、そんなこと。こうして電車にのれたんだから、あとはのってりゃじきに代々木。がたごとゆれて私を運んでオフィスの入ったビルまで歩いてそうして私は仕事して……毎日毎日行っては帰って(時々帰らなくて)、ぐるぐるまわって一生おしまい。別に悲しいと思うこともない、資本の論理は人のあるべき姿を変えた、私たちはもはや人の形をした歯車なんだから、私はその正しい姿であるだけで、くるくるめぐることになんの悲しみもない。

そんなわけ、あるか。

ゲーム専門学校に進学